──名手のお2人にとってはもどかしいですね。
宮本:試合でもビックリすることが起きますからね。ボールをキャッチしてタッチしに行ったらボールがグラブからこぼれる。「え、何が起きたの!?」って思いますよ。そんな考えられないようなミスを防ぐには、根本から変えなければならないんだけど、若手は新しいことを教えると前に教えたことを忘れてしまう。
石井:若手には同じくらいまで目線を下げるよう心掛けていますね。「こうやればできるじゃないか」という指導だと、「それはあなただからできたんでしょ」と拒否反応を示される場合がある。これまでの指導者経験の中で学びました。
宮本:僕は引退後に少年野球を4年間指導した経験が生きているかもしれません。もちろん、子供たちとウチの選手の技術的な問題点が同じわけではないですけど、「できないことがある」という前提で指導するのは同じです。それに琢朗と同様、相手に目線を合わせますね。この間も西浦(直亨)と、「お前27歳か。オレは27の時初めて規定打席に到達したぞ」と話しました。
──お前も今年到達すれば、俺と同じくらいの成績を残せるようになるぞ、と。
宮本:まあ、「お前より少し頭は良かった」とは付け加えましたけどね(笑い)。
石井:僕はなるべく成功体験より失敗談を語るようにしています。過去、失敗してきた中でこうしておけばよかった、と感じたことを伝える。できるだけ選択肢を選手に提示してあげて、その過程で間違わないように、失敗の経験を伝えるわけです。聞き手側になってみればわかるけど、人の成功話は面白くないから(笑い)。でも失敗談は興味を持って聞いてくれます。