一方、民泊新法施行に際し新規開業を予定する事業者にとっても、Airbnbの前倒し削除は衝撃だったようだ。
関西国際空港のお膝元、大阪府泉佐野市で家主居住型の民泊を開業予定の水野哲典さん(48)は、「地元では150軒ほど民泊はあったが新法下で申請しているのは自分も含めて2軒だけ」「削除は想定していたがこれほど早く動きがあるとは……でも自身の事業には嬉しいタイミング」と話す。
そもそも宿泊のマーケット全体で民泊のシェアはどのくらいだったのだろうか?
違法民泊も含めると法律で認められていない施設が多く正確な数の把握は難しいが、観光庁によると2017年7~9月期で訪日外国人客のうち12.4%が民泊を利用したという。ホテル予約が困難といわれた一時に比べて、東京のホテル稼働率が下がってきたと言われているが、民泊のインパクトは相当なものだと話すホテル関係者は多い。
インバウンド増加という近年の状況下、ホテル不足がクローズアップされてきたが、その中でも民泊は多くの問題提起をしてきた。違法、トラブルといったネガティブなニュースが注目されると同時に、宿泊業としての資格有無が問われつつも、激増するインバウンド宿泊の受け皿になってきたことは確かだ。民泊がなかったとしたら、ホテル不足問題はいま以上に深刻さを極めていただろう。
一方で、ホテル数・客室数の増加は堅調であり、今後もホテル稼働は高まる見込みである。そこで、新法施行下で民泊が宿泊業としての地位を確立できるのか。あるいは民泊営業は激減してしまうのか。民泊という概念そのものが変革に迫られている時だといえる。
●文/瀧澤信秋(ホテル評論家)