国内

前川喜平氏を授業に招いた元校長、抗議殺到したが信念持つ

教育者・上井靖さんは前川氏による授業は必要だったと語る(写真は前川氏)

 誤解を恐れず言えば、上役の求める“事実”を上手に編集して話せる人こそが出世している実態が連日、テレビや新聞を通じて明らかになったのが、森友・加計問題の“功績”かもしれない。つまり、エラくなりたければ、ウソつきにならなくてはいけない。翻って、わが子から「それでもウソはいけないの?」と問われたら──。教育者の上井靖さんは今年2月、校長を務めていた名古屋市内の中学校に前川喜平・前文部科学省事務次官を招き授業を開講。賛否が噴出したが、今もなお前川氏による授業は必要だったと考える。なぜか。上井さんが「わが子に『ウソはよくない』と教えてもいいですか?」という疑問に答えを出す。

 * * *
 ウソはついてはいけないもの。それはそうです。でもね、ウソは誰もがついてしまうものでしょう。

 子供もウソをついてしまったら、自分が悪いことをしたとわかっています。そこで大人が「ウソをつくなんていけないことだ」「本当のことを言いなさい」と頭ごなしに叱ってしまえば、子供はサッと心の蓋を閉じてしまう。それは、自分がなんでウソをついてしまったのか、わかろうともしてくれないことに失望するからです。

 子供のウソが発覚した時には、その裏にある気持ちの変化を確認し、同じようなことがあったらどうしたいか、どうするべきかを一緒に考え、子供自身に決めさせることが重要です。「これが正しい」「こうするべき」と大人が押しつけてしまえば、自分で考えて解決しようとする力、答えを見つける力が育たなくなってしまいます。

 加計学園問題で渦中の人となった前川喜平・前文科省事務次官を招いて授業をしてもらったのも、子供たちに、自分たちで何が正しいかを考えて判断する力をつけてほしいと思ったから。文科省から問い合わせがあっただけでなく、一般のかたからもクレームの電話が殺到しましたが、そんなときも考えていたのは「何がこの人をこうさせるのか」という背景です。子供たちにも同様の経験をしてもらいたかったので、「報道の人たちには、自分が思っていることを正々堂々と話していい」と伝えました。

 物事の正しさを自分で判断し、またその基準は常にアップデートされるべきです。「ウソはよくない」ではなく、「誠実や正しさとは何か」という問いで考えさせることで、一律に「ウソ=悪」という思考ではなくなります。人を傷つけるようなウソをついてしまうなど過ちを犯しても、それを受け入れ、謝罪するなどしてやり直し、誠実に変えることもできます。そうした可能性があることに気づかせる教育が必要だと思っています。

※女性セブン2018年6月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト