「私自身も、仕事と育児の両立に悩んだ経験があります。子供と暮らし始めた頃、運送会社で所長として働いていたのですが、月に1日も休めない、朝から晩まで働き詰めの職場でした。勤務中に抜け出して、子供たちに食事を食べさせ、お風呂に入れて、眠りについたら、また会社に戻るという生活です。睡眠時間は毎日2時間半くらい。今思えば無茶な生活でした。
そうすると、あまりに激務で、そのうちうつ病になってしまった。それでも会社はなかなか辞めさせてくれず、退職まで2年もかかりました。父子家庭も母子家庭と同様、職場の理解がなかなか得られない現状があるんです」
男親であるがゆえ、他の保護者たちと打ち解けられずに孤立するという相談もある。
「保育園や学校で、父親が他の保護者と一言も話さずに、卒業したという話もあります。でも、私はそれでよいと思います。無理に仲よくする必要はありません。肩の力を抜いて、ちゃんと子供を見てあげれば、それでいいんですよ」(片山さん)
『パパの涙で子は育つ─シングルパパの子育て奮闘記─』著者の込山正徳さん(55才)も、2人の息子を立派に育てあげたシングルパパ。込山さんが話す。
「前妻はタイ人でした。日本の生活になじめず、3才と8才の子供を残して帰国してしまったのが、シングルファーザーになったきっかけです」
現在は再婚し、妻の連れ子と合わせて3人の子供の父親となった込山さんだが、ひとりで子育てしている間は、日々葛藤もあった。
「テレビディレクターとしてバリバリ働いて、毎日忙しく充実していました。でも、子育てのために仕事を半分に減らさざるを得なくなり、泊りがけのロケで家を空けることもできなくなった。男として働き盛りなのに、思うように働けない。朝から子供がこぼしたジャムを拭いたり、スーパーに特売品を買いに行ったりする自分が情けなく感じる時もありました」
女性に指摘されて初めて気づく、男親の至らなさもあったという。
「洗濯物は、乾いたものを山積みにして、そこから取って使うようにしていたり、子供たちに夏になっても冬物を着せていたり、そういう自分の無頓着な子育てを見られ、“かわいそうじゃない”と今の妻に言われた時、ちゃんとやっているつもりでも、気づけないことがあるんだとハッとしました」
前出の片山さんが言う。
「父子家庭も母子家庭も、ひとり親家庭にはどうしても無理や偏りが生じます。それを抱え込まず、周囲に協力してもらうよう、相談することが大切です。市役所に相談に行けば、どんな支援を受けられるか、一緒に考えてくれることもある。SNSで同じ境遇にある人たちとつながることも、ひとりで頑張っているパパの大きな力になると思います」
※女性セブン2018年6月28日号