国内航空会社のパイロットも次のように指摘する。
「ハイジャック事件で、事態が動くのは緊急着陸の後です。『スカイ・マーシャル』など特別な人員が同乗している場合を除き、飛行中の機体には、警察や軍隊が突入できませんから、ともかく無事に緊急着陸するまでは、黙って犯人の指示に従うことが、命を守ることに直結します」
スカイ・マーシャルとは、拳銃を携行して旅客機に乗り込む私服警官で、日本でも2004年から運用が始まった。彼らはすべての旅客機に乗り込むわけではなく、事前にテロ情報などが寄せられた場合に搭乗するといわれているが、活動の詳細は公開されていない。
「スカイ・マーシャルの役割は、ハイジャック犯にコックピットを渡さないことなので、もし事件が起きた際に彼らが同乗していれば、飛行中の機内で展開があるかもしれません。しかし、その際にも、一般の乗客が勝手に動いてしまうと、彼らの作戦に支障をきたしてしまうでしょう」(同前)
飛行機から無事に脱出するには、警察や軍隊の突入を待つか、交渉により解放されるか、二つに一つ。あえて乗客たちができることは、当局が犯人を制圧・説得するための時間確保に協力することくらいだという。
※週刊ポスト2018年6月29日号