2000年、17歳の少年が牛刀を持って、高速バスをジャックした「西鉄バスジャック事件」は、6名の死傷者を出した。西鉄バスジャック事件で唯一殺害された被害者は、別の乗客が窓から脱出していくなか、それに気づき、激高した犯人に危害を加えられた。被害者自身は逃げようとしていなかったにもかかわらず、である。
個人としての脱出には、残される者へのリスクというまた別の問題がつきまとうのである。
事件当時、ほとんどのバス会社は「バスジャック発生時の対応マニュアル」を作成していなかったが、現在では「車内で緊急事態が発生した場合は、バス前面や後方の表示板に『SOS』と表示して、外部の方による110番通報を促進したり、無線で隠語を使って状況を伝えるなど、初動の通報態勢を強化しています」(東京都営バス)など、各社が詳細なマニュアルを保有している。
※週刊ポスト2018年6月29日号