ブリティッシュ・アメリカン・タバコが展開するグロー
◆飲食店に広がる戸惑い
そうした多様なニーズに応える工夫が民間で先行して進む一方、加熱式たばこを巡る規制も進んでいる。東京都では、「従業員を使用している飲食店は原則屋内禁煙」とする都独自の受動喫煙防止条例が6月の都議会で可決。加熱式たばこについては「専用の喫煙室を設ければ飲食しながら喫煙できる」と、飲食できない喫煙専用室の設置しか認めない紙巻たばこに比べれば緩いといえそうだが、それでも国よりは厳しい。
国は原則屋内禁煙とする飲食店の対象を「100平方メートル超」などと店の規模によるものとしているが、都は従業員を雇っていれば店舗面積にかかわらず規制対象とする。
これによって対象となる都内の飲食店は84%にのぼるとされ、ほとんどの店が対応を迫られるようになる。全面施行は東京五輪が開催される2020年4月の予定だが、飲食業界ではすでに戸惑いが広がっている。都内の飲食店経営者が訴える。
「紙巻たばこのお客さんは店の外で吸ってもらうようにして、加熱式たばこは店内でも喫煙可にするなど、お客さんの要望に応える工夫を重ねてきました。だけどウチみたいな小さな店でも従業員がいるから、専用喫煙室を設置しないとダメになる。そんなスペースも資金もないですよ。
だとすれば、全面禁煙か、従業員を切るか。でも全面禁煙にすれば常連客のほとんどが喫煙者で売り上げが減るのは間違いないだろうし、全面禁煙にしないで済むように従業員のクビを切るわけにもいかないし、いったいどうしたらいいのか……。いずれにしろ経済的な打撃は避けられない」
テクノロジーの進歩で新たな製品が生まれ、それらを取り込んだ現場の自助努力と工夫は今後どうなってしまうのか。行方を見守りたい。
※SAPIO2018年7・8月号