やろうと思えばいくらでも不正が可能なのだ。元国税調査官の税理士で、『押せば意外に 税務署なんて怖くない』(かんき出版)著者、松嶋洋氏は税務署の実務の実態についてこう話す。

「確定申告の処理で、税務署員は控除関係の添付書類なんてまず見ません。処理する量が膨大で、とてもそこまで見ていられない。扶養親族が5人も6 人も書かれていたら注意はしますが、基本的にはザルですね」

 自営業者などの確定申告では扶養親族は税務署が確認するが、給与所得者が年末調整で申告した場合は、会社に扶養親族の確認義務があり、ここがザルだと素通りになるうえ、会社が責任を負わされるというから、たまったものではない。

 日本の扶養控除の規定は、主要先進国に比べて非常に緩く、たとえば、欧州では控除対象は直系尊属(自身の父母、祖父母)と実子のみに限定するといった規定が一般的で、米国では実子でも半年以上同居していなければ控除対象にならない。

 もちろん、諸外国がそうだからといって日本もそうしなければならないという理由はないが、ただ、日本人と外国人で区別しても問題ないのではないか。

「日本では『相互主義』という言葉が勘違いされている。外国人もまったく同じように扱うということではなく、相互で確認して了解を得るということです。だから、外国人の場合は1親等までに限るとか、海外の扶養家族は認めないとか、月10万円以上の送金でないと認めないとか、制約を設けても構わないと考えます」(前出・小坪市議)

 日本人が納税意欲を失うような制度はやめていただきたいものである。

【PROFILE】清水典之(しみず・みちゆき) 1966年愛知県生まれ。大阪大学工学部卒業。1991年よりフリーランス。著書に『「脱・石油社会」日本は逆襲する』(光文社刊)がある。

※SAPIO2018年7・8月号

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