防大を舞台にした『あおざくら』では先輩からの“しごき”が描かれている
「特に1年生は、部屋の掃除などができていないと上級生から厳しくチェックされ、指導されます。あるOBの方が冗談として語っていたんですが、“1学年は石ころ、2学年は奴隷、3学年は人間、4学年は神”だと。1年生の扱いがおかしいですよね(笑い)。
例えば、『容儀点検』という身だしなみのチェックがあります。チェックするのは3~4年生で、アイロンのかけ方、頭髪の伸び方、携帯品に不備はないかなど、細かくチェックされます。土日は外出できることになっていますが、これをクリアしないと外出できません。1学年は一生懸命準備して点検に臨むのですが、学生が“どんなにキチンとしていても受からない……”と嘆いていたくらい、細かいようです」(二階堂氏)
アイロンがけがきちんとできていないと、「プレス不備!」。ホコリがついていれば「ホコリ不備!」。さらに「目の輝き不備!」や「やる気不備!」といったような“理不尽”とも思えるケースもあるとか。二階堂氏が続ける。
「確かに厳しくて理不尽なのですが、それを話してくれる防大出身者の方々からは、恨みのようなものを感じませんでした。
別のOBの方が言うには『それは“理不尽”を学ぶ必要があるからです』と。彼らは将来幹部自衛官になるために防大に入りました。幹部自衛官は、天災や有事の際に、何かを決めなければならない立場です。そういう時は、普段とまったく違うことが起きていて、言ってみれば『状況自体が理不尽』だというのです。自分ではなく、他人の命に責任を負う立場になる。だからこそ、理不尽への耐性を持たなければならないんだと語っていたのが印象に残っています」