AIと介護という不思議な組み合わせでビジネスに取り組む企業がある。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、そのユニークなチャレンジを続ける企業、株式会社エクサウィーズ代表の石山洸さんに会って、話を聞いた。
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先日、ある男性と対談した。石山洸さん(35歳)。今いちばん注目されているベンチャーの雄である。リクルートでAI研究機関を立ち上げ、その後、退職して次々とベンチャー企業にかかわってきた。2016年に立ち上げた株式会社エクサウィザーズでは、介護という社会課題の解決のため、AIを活用した事業に取り組んでいる。
AIと介護という不思議な組み合わせに、ひっかかりを感じた。AIが普及したら、いくつかの職業はなくなるのではないかといわれている。たとえば、小売店の販売員、会計士、一般事務、秘書、スーパーやコンビニのレジ係、電車やタクシーなどの運転手……。
そんななかで高度な対人関係能力が求められる介護の分野は、AIとは遠い分野だと思ってきた。介護の、言葉にならない言葉を聞く非言語コミュニケーションは、AIには到底できないのではないか、と。
彼が着目したのは、認知症ケアの「ユマニチュード」という技法だ。「知覚、感情、言語による包括的ケア技法」ともいわれ、35年前、2人のフランス人によって考案された。