たとえば、認知症の人に話しかけるときには、目線を合わせ、やさしく手などに触れながら語り掛ける。触り方もコツがある。腕をつかむと、恐怖を感じさせてしまい、介護を拒否されることが多い。ユマニチュードでは、下から腕を支えるようにもちあげる、といった技法が用いられる。
石山さんは、AIを活用し、だれでもユマニチュードを習得できるようにした。家庭でのケアの様子を、カメラを通してAIが分析し、どのように接すればいいのか、AIがユマニチュードの技法を教えてくれるのだ。そうやって、介護の質を高め、人材育成をしていくことで、介護難民があふれるといわれる2025年問題を解決しようとしている。
もちろん、ビジネスだから志だけでは成立しない。かつての介護ビジネスバブルの時代は終わり、現在は厳しい冬の時代だ。介護ビジネスを起業し上場できたとしても、株価は2、3倍が限界だろう。
一方、AIの世界はテクノロジーが進化し、長期的成長が期待できるので、株価は最大50倍も予想される。介護ビジネスへの投資は二の足を踏んでも、AIと介護を組み合わせれば投資する人が増える、と石山さんは睨んでいる。
さらに石山さんは、おもしろいことを考えている。AIの得意技は、たくさんのデータを集めて、解析すること。介護士がどうかかわると、利用者がどう反応するかというたくさんの情報を蓄積することで、「根拠に基づく介護」ができていく可能性がある。