ライフ

林立タワマン武蔵小杉の死角 保育所不足、吹き荒れるビル風

2017年11月時点の武蔵小杉(時事通信フォト/朝日航洋)

 東京郊外の駅近タワーマンションの売れ行きが好調だという。都心より割安で、かつ生活の利便性も高まると、地方から引っ越してくるシニア層も多い。だが、そんな需要を見越してタワーマンションを林立させた結果、様々な弊害が起きている。神奈川県川崎市にある「武蔵小杉」はその典型だ。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が武蔵小杉の現状を憂う。

 * * *
 そもそも、タワーマンションは限られた土地に数多くの住戸を作るための必要悪のようなもの──と私は考えている。そこに住むメリットは、高層階からの爽快な眺めと開放感。あるいは大規模であるが故の充実した共用施設。それくらいのものではないだろうか。

 タワーマンションのデメリットをあげれば、キリがなくなる。何よりも、そこに住んでいない近隣住民にとってはその存在自体は迷惑そのものでしかない。

 まず、外観が醜悪である。建築造形というのは、それ自体が街並みを形成する芸術作品である、とヨーロッパ人は普通に考えている。だから、街並みにそぐわない建築様式は規制される。また市民の意識として作らない。だから、ヨーロッパにはタワーマンションの類はほとんどない。

 そのあたり、日本人の感覚は大きくずれている。タワーマンションが醜悪だと捉える人は、ほんの少数派だ。だから、日本中のあらゆるところにタワーマンションが建てられている。

 次に、周辺の街並みへの日照を阻害する。例えば、川崎市の武蔵小杉のある一画では、現在計画中のタワーマンションがすべて竣工すると、一日にほんの数時間しか日照を得られなくなるという。迷惑この上ない話ではないか。

 もっとも、本来わざわざタワーマンションをさほど作らなくてもいい場所にまで大量に建ててしまったことによって、武蔵小杉は様々な悲劇を生んでいる。

「改札にたどり着くまでに何分もかかる」──そういう報道でにわかに脚光を浴びたこの街。JR横須賀線の「武蔵小杉」駅が開業したのは2010年。東京駅まで一気に直通でアクセスできることになった。

 その頃から、駅周辺はタワーマンションの建設ラッシュとなった。分譲と賃貸を合わせて十数本のタワーマンションが天空を貫くように立っている。当然、人口も急増した。

 その結果、JRの2つの「武蔵小杉」駅と、東急東横線の「武蔵小杉」駅では朝夕のラッシュ時には大変なことになっている。特にJR横須賀線の「武蔵小杉」駅は地元から利用する人と、南武線から乗り換える利用者でラッシュ時にはホームに人が溢れる。

 ところが線路が湾曲しているために、ホームと線路の間に柵やホームドアを取り付けることが困難だという。現在、ホームの増設が計画されているが、いつ事故が起こってもおかしくない状況に見える。

関連キーワード

関連記事

トピックス

盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
「『逃げも隠れもしない』と話しています」地元・伊東市で動揺広がる“学歴詐称疑惑” 田久保真紀市長は支援者に“謝罪行脚”か《問い合わせ200件超で市役所パンク》
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
モサドの次なる標的とは(右はモサド長官のダビデ・バルネア氏、左はネタニヤフ首相/共同通信社)
イスラエルの対イラン「ライジング・ライオン作戦」を成功させた“世界最強諜報機関”モサドのベールに包まれた業務 イラン防諜部隊のトップ以下20人を二重スパイにした実績も
週刊ポスト
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
事件の“断末魔”、殴打された痕跡、部屋中に血痕…“自慢の恋人”東川千愛礼さん(19)を襲った安藤陸人容疑者の「強烈な殺意」【豊田市19歳刺殺事件】
NEWSポストセブン