「警察の管理官が俺に向かって、丸腰で取り調べをしているみたいな口ぶりでね…。『お前な、そんなことしたらな』と、自分がもう捕まってて、取調室で調べられてるような雰囲気で話しかけてきて。この時、この人がどういう人かと思った。俺は拳銃持ってんのに丸腰で、全然怖い素振りもしないんだ」(犯人の調書より)
犯人はこの時、「この人に負けたと思った」と話している。
元刑事はその後、すぐに現場復帰した。その経験がその後の警察官人生にどんな影響を与えたのかを聞いてみた。
「こういう事件があって教訓としたのは…、自分は生きているから、危ない所、誰が危ない目にあうのなら俺がやろうということだね」
上を向いてそう答えてくれた。例えば、「不審物あり」と通報が入る。アタッシェケースからカチカチ音がしている現場へ真っ先に入らなければならない時、それを誰かがどこかへ持っていかないといけない時、彼は先頭に立ったという。
「全然怖くないさ、もう1回死んでるんだから」
日本では全国の発砲件数は2016年が27件、うち死傷者は11名、2015年が8件で死傷者数4名、2014年は32件で死傷者数は10名だ。都内だけでいえば2016年の発砲件数は3件、死者2名、2015年度は1件で死傷者0名である。
一方、アメリカのピュー研究所の2017年調査によると、アメリカで民間人が所有している銃の数は2億7000万丁、2016年の銃による死者は1万1004人、うち銃による自殺者は5500人で約64%に上る。
アメリカでは、友達の友達のそのまた友達…とたどっていけば、どこかで誰かが撃たれた、知り合いが撃たれたという話を聞くのかもしれない。しかし、日本がそんな国にはなってほしくない。殉職した刑事のお墓参りには、当時の関係者たちが集まって線香をあげるという。
「拳銃は刑事ドラマの中だけでいい。撃たれたからこそ、そう思うんだ」と彼は言った。