猛暑は体力を奪うだけでなく、大人の男性にとっては臭いも気になるところ。有事の際にどう行動するか。コラムニストの石原壮一郎氏が提唱する。
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「おっさん臭い」という言葉には、抽象的な意味と具体的な意味があります。おしぼりで顔を拭いたりダジャレを言ったりするのが、抽象的な「おっさん臭さ」。いっぽう具体的な「おっさん臭さ」を発生させているのが、いわゆる「加齢臭」です。夏のこの時期は皮脂量が増えて、よりいっそう猛威を振るいがち。
化粧品メーカーや石鹸メーカーが脅すせいで、我々おっさんは加齢臭という単語を見ると「ギクッ」とせずにはいられません。しかし、加齢臭は男女を問わず誰にでもあるもので、逆に言えば、どうあがいても縁を切れない運命にあります。必要以上に恐れることなく、加齢臭との香ばしい付き合い方を探りましょう。
おっさんとして心がけたいのは、家族などに「お父さん、加齢臭がするよ」と言われたときに、いかに華麗な反応をするか。「う、うるさい! しょうがないだろ!」と怒ってしまうのは論外。それなりに勇気を出して注意してくれたのに、二度と言ってくれなくなるのはもちろん、「なんて小さい人間なんだ」と幻滅されて深い溝ができてしまいます。
「加齢臭がするよ」と言われたら、相手の手を握って「ああ、よくぞ言ってくれた! 家族というのは(妻というのは)なんてありがたいんだろう! ありがとう! これからもよろしく!」と全力で感動を伝えましょう。いっそのことハグしてもいいですね。
さらに続けて「加齢臭は、頭や耳の回り、首の後ろ、脇、胸、背中あたりから発生しやすいらしいけど、どこからだろうな。ちょっと背中を嗅いでみてくれ」と言えば、なごやかなひとときが持てるかもしれません。相手が同年代の妻なら「君も嗅いでやろう」といろんなところをクンクンすることで、愛情を示すこともできます。嗅いだ上で「加齢臭らしきものも感じるけど、それもまた君らしくて素敵だよ」と言えば、妻も「まあ、あなたったら」とか何とか言いつつ頬を赤く染めて、甘い雰囲気が漂うこと請け合い。
同年代のおっさん同士で酒を飲むときも、身近な話題である加齢臭で大いに盛り上がりましょう。そもそも加齢臭とは、中高年に特有の「脂臭くて、青臭い臭い」のこと。1999年に資生堂の研究所が、臭いを発生させている原因物質の「ノネナール」を発見しました。「加齢臭」という名前も、資生堂が命名したとか。