せっかくなので歴史ある金さんシリーズと最新金さんの違いや細かいみどころをご紹介したい。東映では映画時代を含めると70年近く金さんを撮り続けてきた。その伝統のお白洲では、金四郎の後ろに「至誠一貫」の文字があるのが定番になっている。最後まで誠を貫くという意味で、現在も大学や企業の方針として採用されている。
また、歴代金さんの中でももっともファッションにこだわったともいえる松岡金さん。過去の金さんは、お白州で自分のバックにある襖が「卍」をモチーフにした紗綾型のブルー系の文様とのコーディネートを意識してか、着物も青系が多かったが、松岡は遊び人姿の際にも、お白州で斬る裃(かみしも)にも、本人が好きだという紫系を使っている。
お白州での桜吹雪披露の瞬間は、紫の袴をぶわっと蹴っ飛ばして、悪人をにらみつけるのがお約束。松岡金さんの蹴り飛ばしの足の高さは、歴代一番かも。これまでの金さん時代劇にはない角度で蹴り飛ばしシーンだと思ったら、コマーシャルなどで活躍する下山天監督のセンスだった。
そして最後は、お白州で、金四郎の後ろで筆を動かす筆記係の動きに注目。当初は武士らしい言葉遣いの金四郎が悪人たちの偽証に怒り、突如、「おうおうおう」と片肌脱いで桜吹雪オープンする。驚愕する悪人たちとは違い、筆記係は「またお奉行様…」と思っているのか至って冷静。「おうおう」とリアルに金四郎の言葉を筆記しているのか? 時代劇永遠の謎として、語り継いでいきたい話である。