日本独自のルールやマナーを丁寧に教えるのも「おもてなし力」
そして、欧米などと明らかに違うのが、嗜好品を嗜む際のマナーやルールだ。
例えばアメリカでは、公共の場や屋外での飲酒が禁止されているのに対し、日本は屋外で酒を飲みながら大勢で花見をしたり、出張帰りの新幹線内で缶ビールを呷るサラリーマンの姿もよく見かける。ツアー中のはとバス内でも基本的にアルコール類を含めて飲食は禁止されていないが、控える外国人は多いという。
喫煙ルールに関しても困惑する外国人旅行者が少なからずいるという。
主要な欧米諸国では「屋内禁煙」が徹底されているものの、屋外は比較的自由にたばこが吸える国が多い。そのため、灰皿が置いていない街中ではポイ捨てされた吸い殻が目立つエリアも点在する。
一方、日本では各自治体の条例などで定められた屋外での路上喫煙禁止区域が張り巡らされ、違反者には過料が徴収されるケースもある。また、受動喫煙防止の観点から屋外の喫煙エリアや灰皿がどんどん撤去される方向にあるため、外国人のスモーカーたちはどこでたばこを吸っていいのか分からないのだという。
「立ち寄る観光スポットに喫煙所や灰皿がある場合には、事前にバスの中で案内したりもするのですが、自国での習慣で、つい皇居外苑や明治神宮など広い場所で吸い始めてしまう外国人も見かけます。もちろんその都度、喫煙所を案内したり、ここでは喫煙不可ということを伝えたりしています。
ちなみにネタとして『日本では外でも喫煙所以外でたばこを吸ったら2000円の罰金を取られるエリアもありますよ』と紹介すると、“WHY!?”状態に。みなさん『居酒屋では吸える店もあるのに、外で吸えないのはなぜ?』とかなり不思議に思われるみたいです」
今後はオリンピックを見据えた東京都の受動喫煙防止条例も成立したことで、屋内外を問わず分煙のさらなる徹底が進んでいくだろうが、新ルールの周知には時間もかかる。
はとバスでは、かつて定期観光バスの車内でもたばこが吸えた時代もあったが、早々と1995年から貸し切りバスを除いて禁煙にしたという。
「昔から外国人でもたばこの煙が嫌いという人はいたので、車内の座席を喫煙・禁煙に分けて窓を開けるなど対策をしてきたようです。いまは他人に迷惑をかけないという意味でも、人が密集した空間での禁煙は最低限のマナーとしても万国共通になりつつあります。
ただ、全国的に喫煙できる場所とできない場所の分かりやすい統一ルールがなければ、日本人だけでなく外国人の旅行者はもっと困惑します。私たちガイドも屋内の喫煙専用スペースを含めて、ツアー行程の下見段階で喫煙所の有無を確認するようにしたいと思いますが……」
東京は世界の首都と比べても、街中の環境美化や治安の良さ、人々のマナー遵守や思いやりの精神といった点で誇れるところがたくさんある。オリンピックを通じて、いかに“日本らしさ”を世界中にアピールできるかも、観光立国を目指す日本の大事な責務といえるだろう。