『ハスリンボーイ』は原作・草下シンヤ氏、漫画・本田優貴氏のコンビが描く

「他に俺が小遣い稼ぎでやっていたのは、“偽装結婚の紹介”や“運びの斡旋”だね。誰か人いない?って聞かれれば、それに対応してあげるのが俺のやり方だったよ」

 偽装結婚の紹介…。巨大繁華街を有する池袋にはさまざまな素性を持った人間が集まる。その中には日本人の国籍を欲しがる外国人も多い。借金の債務者などに持ち掛ければ、条件次第で婚姻は成立する。偽造結婚のブローカーに“新郎”を紹介し、20〜30万円の報酬を得る。

 また、「運び」というのは薬物を海外から密輸する人間のことを指している。たとえば、マリファナが合法化されているアメリカのカリフォルニア州に行き、大量に仕入れる。それをコンドームに詰めて飲み込んだり、肛門に押し込んで日本に運び込むボディパッキングは昔から続く手法である。

 運びではなく、「送り」という仕事もある。これは電化製品や美術品、家具などに薬物を隠し、日本に空輸するものだ。

 アメリカは入国の際は異常なほど厳しいチェックを受けるが、出国の際はザルといってもいい。そのため、アメリカから運び・送りをする際は日本の税関をいかにすり抜けるかということに留意する。

 たとえば全身にタトゥーが入っていたり、いかにも裏社会の臭いをプンプンさせた者などは警戒されるが、一般旅行客はスルーされる可能性が高い。運び・送りを行なう者は50〜100万円ほどの報酬を手にし、山崎には10〜20万円の紹介料が入る。

 山崎の口からは次々に裏社会の人材派遣業の実体が浮かび上がる。私は他にヤバい斡旋の話はないかと聞いた。

「先に言っておくけど、これは俺が手がけた仕事じゃない。知り合いの1人が飯場仕事の斡旋やってるんだけど、相当ブラック。1人いくらで引っ張ってきて、山奥の工事現場に送り込む。まあ、そこまではよくある話だけど、そいつの身体が壊れて使い物にならなくなれば、そのまま背中を押して……。そこに保険金なんかも絡むって話だよ」

 借金で首が回らなくなったり、警察から追われていたりして、表社会に居場所がなくなった人間は裏社会ではまるで“モノ”のように扱われる。くれぐれも山崎のような人間に値段をつけられるような生き方をしてはならないのである。

【PROFILE】草下シンヤ/1978年、静岡県出身。豊富な人脈を活かした裏社会取材を得意とし、『実録ドラッグレポート』『裏のハローワーク』などの著作がある。現在「週刊ビッグコミックスピリッツ」にて『ハスリンボーイ』(原作担当/漫画・本田優貴氏)を連載中。第1話試し読み http://spi.tameshiyo.me/HUSTLINSPI01 Twitterアドレス https://twitter.com/kusakashinya

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