速く歩くほど寿命が伸びるメカニズムを、東京都健康長寿医療センター研究所の谷口優氏が解説する。
「速歩きをして適度な負担を心臓に与えると、血流の低下を防いで血栓を押し流すことにつながり、心筋梗塞など心血管疾患のリスクを減らすと考えられます。対してゆっくり歩きは心臓に負荷を与えられず、寿命を伸ばす効果は期待できません」
歩行速度は、脳の機能低下とも関係する。米ボストン・メディカルセンターのカマルゴ博士らが平均年齢62歳の健康な男女約2400人を11年間にわたって追跡調査したところ、調査開始時に歩く速度が遅かった人は、速かった人に比べてその後の認知症の発症リスクが1.5倍高かった。
「他の研究でも、歩く速度の遅い人は脳梗塞を起こしたり、前頭野の萎縮や脳機能障害が疑われる例が報告されています」(谷口氏)
では、どのくらいの速歩きをめざせばいいのか。谷口氏は、心拍数120~140程度で「ややきつい」と感じる程度のスピードを勧める。
「一緒に歩いている人との会話が何とか継続できる程度の速さが目安です」
※週刊ポスト2018年8月31日号