今やヨーグルトの中でも、定番ジャンルとなったギリシャヨーグルトだが、その先駆け的存在として7年前に発売されたのが、森永乳業の『パルテノ』だ。濃密でしっとりした新食感は、日本人にどのようにして受け入れられたのだろうか。
ギリシャヨーグルトの『パルテノ』の商品開発が始まったのは、ちょうど10年前。当時、“メタボ検診”が話題となり、お腹まわりについた脂肪を気にする人が増えていた。そのことから、ヨーグルト市場でも“脂肪分ゼロ”を謳った商品が多く流通していた。
森永乳業では、フルーツタイプの『森永アロエヨーグルト』のほか、『ビヒダスヨーグルト脂肪ゼロ』など、多種多様なヨーグルトを販売していた。しかしその頃、“脂肪分ゼロ”のヨーグルトに、味わいとして物足りなさを感じるという消費者の声も上がり始めていた。そこで新たな商品として、フルーツタイプでも“脂肪分ゼロ”タイプでもない、新しい味わいと食感のヨーグルトの開発を目指した。
開発担当者は、当時、ニューヨークで人気に火が付きかけていたギリシャヨーグルトに注目した。さっそく、ありとあらゆるギリシャヨーグルトを取り寄せてみたところ、今までのヨーグルトとはまったく違う、クリーミーで濃厚な食感に衝撃を受けた。「この驚きを、消費者に届けたい」──そんな思いを抱いて、ついに開発が始まった。
ヨーグルトづくりではまず、無数にある乳酸菌の中から、どの菌種を使うか吟味して選定する必要がある。乳酸菌の種類によって、作り手が目指す味わいが変わるほか、合わせるフルーツによっても、出来上がりの性質が変化するからだ。
また当時は、ギリシャヨーグルトの製法において、乳成分を固めるためのたんぱく質を発酵前後に入れる製法の商品が多く流通していた。しかし『パルテノ』は、たんぱく質を添加して固めるのではなく、ギリシャ古来の水切り製法によって、乳成分を濃縮させる方法を採用することで、日本人好みのなめらかな舌触りが実現できると考えた。コーヒーフィルターでヨーグルトの水切りをするようなやり方だ。
試作は研究所で行われるが、出荷のために工場でどのように水切りをして大量生産体制を組むかに、苦労した。そしてついに、現在の「3倍濃縮製法」にたどり着いた。発案から3年の月日が流れていた。
今までにない食感のヨーグルトをまずは体感してもらいたいと、試食販売やイベントを実施した。狙いはあたり、「ヨーグルトじゃないみたい」「今までにない舌触り」という感想を得ることができた。そしてこうした活動により、日本国内でギリシャヨーグルトそのものの認知度も上がっていった。
今年の6月にはクラッカーに『パルテノ』をのせてもツノが立つ、流行りの“マウンテンヨーグルト”を体験してもらうイベントが行われた。マーケティング担当者は「その味や食感に驚いてもらえることが、本当にうれしい」と顔をほころばせていた。
※女性セブン2018年9月6日号