このような過酷な環境で身体が弱っていたのか、今年7月下旬に王氏は病気がもとで急逝した。
その10日後の8月7日付の中国共産党機関紙「人民日報」や人民解放軍機関紙「解放軍報」など中国各紙は習氏の異例の「重要指示」を受けて、王氏礼賛一色となった。その後も、解放軍報を筆頭に王氏の愛国心を宣揚する報道は途切れなく続けられている。
これについて、「習近平の正体」(小学館刊)の著書もあり、中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏は次のように解説する。
「中国では愛国主義教育は珍しくないが、王氏のように亡くなったばかりの人物をキャンペーンの対象にするには稀といえる。王氏礼賛のキャンペーンには習氏の政治的思惑が働いているのは間違いない。例えば、8月初旬には長老指導者を交えての重要会議である北戴河会議の時期に当たっていた。
折からの米中貿易戦争によって、習氏の外交姿勢について、中国共産党内部でも批判が高まっていると伝えられている。それだけに、今年秋に開かれる年に1回の党の最重要会議で党中央委員会総会を乗り切るために、愛国主義キャンペーンなどで党内の求心力を高めたい思惑があるのではないか」