事前に1万800円也のプレミアムが付いた公式スタッフTシャツを遮二無二買い求めて身にまといつつ、私の『カメ止め』聖地巡礼は無事終了した。
思えば大林宣彦の『尾道三部作』(広島)も、岩井俊二の『Love Letter』(小樽)も、ロケ地というものがある。いや、そもそも全ての実写作品にはCG表現等を除けば現物のロケ地というものが存在するわけだが、ここまで熱心に、まるで熱病にかかったように、取り憑かれたように作品のロケ地に行ってみようと想い即実行したのは、私の人生に於いて初めての経験であった。それほど『カメ止め』が、観たものに対して圧倒的な熱量を放射するのである。
『カメ止め』を観た多くの観客は、その感動をこう表現している。「感染」。そう、まさしくこの熱狂は、伝染病のごとき感染に等しい。
監督の上田慎一郎は弱冠34歳。私と同世代だ。キャストは名前も聞いたことの無い人々。だが、その現状も本作の大ヒットを分水嶺として一変するだろう。上田慎一郎は「世界のUEDA」になる。出演者は本作が「出世作」としてその略歴に記される。