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2018.09.10 07:00  女性セブン

7本指のピアニスト、座右の銘は「毒は愛をもって制す」

「ポジティブな言葉を口に出すと、幸運が向こうからやってくる」と西川さん

 ニューヨークを中心に世界で活躍するピアニスト・西川悟平(43才)。15才でピアノを始め、音大に合格し、ニューヨークへ。念願かなってピアニストになったが、27才のときに神経の病気である「ジストニア」が発症。左手は親指と人差指でしか演奏できなくなってしまったのだ。

 病気による挫折を味わうも、再び奮起して、ピアニストとして復活を果たす西川だったが、また悲劇が襲う。

 誰よりも彼を心配し、期待し、案じてきた最愛の母が亡くなったのだ。

「がんでした。53才の若さで亡くなった母の葬式に出られなかったことと、復活した自分の演奏を聴かせられなかったことは今でも心残りです。一生後悔するでしょう。当時は医療費もかさみ、どうしても日本に帰る渡航費を出せなかった」(西川、以下同)

 代わりに日本で葬儀が行われるのと同じ時間にニューヨークの自宅で葬儀を行った。

「母が大好きだったピンクのバラを敷き詰め、弔問客にはあえて黒を着ないようにお願いしました。底抜けに明るくて、華やかなことが大好きだった母にふさわしい見送り方をしたかったんです。

 最期まで母は『ニューヨークで一旗あげて来てね。私の心配はしないで。あなたの成功が私の薬だから』と言っていた。この言葉は、『ニューヨークにいても、テレビや雑誌で見られるように頑張ろう』とぼくを奮い立たせてくれました…でも、間に合わなかった」

「見せたかった」そう涙する西川の復活舞台は、母が亡くなって1年後、2008年の夏。

 イタリアで行われた「アレクサンダー&ブオーノ国際音楽フェスティバル」だった。

「主催者から『7本指で弾くことを絶対に明かすな』ときつく言われました。ぼくは『なんで言ったらあかんねん、意地悪やな』って思っていました。曲はショパンの『ノクターン第13番』。豊かな表現が必要とされる難曲です。果たしてこれを、最後まで弾ききることができるのだろうか、と緊張しましたが、弾き終わったら満場のスタンディングオベーションでした」

 すると主催者が前に出てきて、「実はゴヘイは7本の指で弾いているんです」と明かし、再びスタンディングオベーションが巻き起こる。

「『明かすな』は彼の気遣いだったんです。先に7本指だと伝えると、先入観を持って聴いてしまうからよくない。今日は何も知らない聴衆から、スタンディングオベーションを受けたのだから、もっと自分の演奏に自信を持ちなさい、と励ましてくれました」

「中3から始めてプロのピアニストは不可能」「ニューヨークで活動するのは普通の人は難しい」「7本しか指が動かないのなら諦めろ」

 西川の人生にはこれまでいくつもの“インポッシブル”が降りかかってきた。

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