「全国学力・学習状況調査」(通称・全国学力テスト、2017年度・対象は200万人)の結果が、7月末に公表された。この調査では、テストを受けた小6と中3の保護者12万人から無作為に抽出した「保護者アンケート」も実施。「両親の学歴」「所得」「就業時間」といった家庭環境や経済状況を尋ね、子供のテスト正答率との相関関係を調べた。その結果、保護者と家庭環境が子供の学力に影響を与えることが浮き彫りになった。
親子のコミュニケーションの大切さについてはこれまでも議論しつくされてきたが、今回の調査で際立ったのは「子供から親に話す」ことの重要性だ。調査では、“子供の側”から「学校での出来事や友達」「勉強や成績」「将来や進路」「地域や社会の出来事やニュース」について積極的に話す家庭ほど、子供の学力が高かった。
一方で、“親の側”から話をする家庭の子供に学力差は認められなかった。要は、親がガミガミと口うるさく言っても、意味がないということだ。菅原脳神経外科クリニックの菅原道仁院長は、自ら積極的にコミュニケーションを取ろうとすることで、子供の脳が活性化されると指摘する。
「自分で話す内容を考えて、それを口にすることで判断力や創造性を担う脳の前頭葉にある『前頭前野』が発達します。実際にアメリカでは子供に作者名やタイトルなどを伏せて芸術作品を鑑賞させて、その感想を言い合うことで脳を刺激して学力を伸ばす『VTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)』という教育法が成果を挙げています。『どんな感想でも言っていいんだ』と子供に思わせることがこのトレーニングの最大のポイントであり、将来や進路、ニュースについても、自由に、また自発的にしゃべることはこの方法と同じ効果をもたらすといえるでしょう」
子供の話を聞く際、親にとって大切なのは、子供がうまく話せなかったとしても粘り強く話に耳を傾けることだ。“カリスマ国語嚆矢”として知られる予備校講師の吉田裕子先生は話す。
「どんなにわかりづらくても子供が何かを話している時は粘り強く聞き、途中で『どこが面白かったの?』『何に驚いたの?』など問いを挟んでください。子供が『えーっと、えーっと…』と自分の頭で必死に考え、口に出すことで言語能力が向上します」
※女性セブン2018年9月27日号