「東日本大震災では、石巻市の病院で懐中電灯で照らしながら手術を行なったことが記録されています。そのため、震災後は手術室に懐中電灯を常備するケースが増えている。懐中電灯がなければペンライトやスマホで照らして、とにかく終了できるところまで処置することになる」(佐々木氏)
患部が見えにくいなか、どこまで手術を継続すべきか、医師は難しい判断を迫られることになる。過去には停電時に非常用電源も止まり、手術室のドアが開かなくなったケースもあるという。
「手術室に出入りするまでには複数の自動ドアがあり、開閉できず患者が手術室に入れない、術後の患者をICUや病棟に戻せないということが起こる可能性がある。多くの病院の災害マニュアルでは『災害発生時には手術室までの自動ドアをあらかじめ開いておき、出入口を確保すること』などとしています」(佐々木氏)
◆院内で火災発生の危険も
地震による二次災害の筆頭は火災。非常用発電機が作動しなければ、火災発生時にもスプリンクラーや屋内消火栓が使えない。米山医院院長の米山公啓医師が解説する。
「大病院には一定の割合で、自力で逃げ出すことができない患者さんがいる。医師や看護師はそうした患者さんの避難を優先させますが、エレベーターも停止するので、避難は困難を極めるでしょう」