中川:あの当時は、ネット界隈からすごい反発がありましたね。さらに、メディアもネットのすごさを煽るようなところがあったから、本自体は売れていたにもかかわらず書評がまったく出ない。まともなメディアに載った同書の紹介は1回だけなんですよ。取り上げてくれたのがコラムニストの勝谷誠彦さんでした。
橘:ちょっと変わった人?
中川:無茶苦茶変わった人で、彼だけが面白いと言ってくれて、ちょっと、アンタ会おうよ!ということになって取材をしてくれました。雑誌連載で、「こんなぶっ飛んだ本を書いた頭おかしいやつと会ってきたぞ!」というのを書いてくださったんです。取材の後は、焼き肉屋に連れて行ってもらったのですが、まともな書評的なもので紹介していただいたのはこれくらいなんですよ!
他の新聞や雑誌はすべて「ウェブ2.0は素晴らしい!」ということを書いた本を紹介してきて、「これからはウェブだ!」っていう論陣を張っちゃったんです。オレみたいな逆張りのウェブ論を展開したものを載せるわけにはいかなかったというのもあるんじゃないかな、と思っています。そこから2010年くらいまでは、オレ自身は業界ではすごく浮いていて、誰も会ってくれなかったんですよね。ようやく2010年2月にジャーナリストの津田大介さんとサシで8時間ぐらい飲んだ後、「中川君は意外といいヤツだ」みたいな情報発信をしてくれ、2011年の東日本大震災が終わったくらいから、何となく業界の人とも仲良くなって、完全に和解したという感じになれました。
橘:それは、今はもう「ウェブはバカと暇人のものである」ということを誰も否定できなくなったから?
中川:「オレたちもあの頃は反発したけど、中川さんは正しかったね」と業界の人々からも言ってもらいました。
──いわゆる「バカッター報道」は、いつ頃のことでしたか?
中川:2013年ですね。飲食店のバイトとかが冷蔵庫に入ったり、ソーセージを咥えていちいちツイッターに投稿する騒動が相次いだじゃないですか。これが“バカッター”と呼ばれ、これにより「ウェブはバカと暇人のもの」が決定打になっちゃったんですよね。