日本で「入れ歯」を使っている人は2000万人超と推計されている。毎日の生活に欠かせない存在だが、他人と会話中に、ポロッと「入れ歯が外れる経験」をした人、ヒヤッとした人は少なくないだろう。問題のある入れ歯が存在する背景とは? 話題書『やってはいけない歯科治療』の著者・岩澤倫彦氏がレポートする。
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歯科大付属病院に長く勤務していた知人の歯医者(50代)は、実家に帰省して苦い思いをした。母親が自費の入れ歯を作ったものの、外れやすくて困っていたのだ。
「自費なら良い入れ歯ができる、と勧められたそうです。でも、保険の10倍の費用がかかった入れ歯を見たら、全然合っていない。年寄りを騙すなんて、同じ歯医者として情けないです」(50代の歯医者)
知人が入れ歯を保険で製作したところ、ぴったりと外れないものができて、母親は驚いていたという。
「痛くない、外れない、噛める入れ歯という点では、保険でも十分に良い入れ歯は製作できます。“入れ歯の名人”と言われている人は、保険と同じ素材(プラスチック系のレジン)を使っていますよ」(同前)
ただし、保険と自費の入れ歯には歴然とした違いもあると、入れ歯の製作技術を指導する、村岡秀明氏(むらおか歯科・千葉県市川市)は言う。
「保険のレジン(プラスチック系素材)は、強度を保つために厚みが約2ミリ必要ですが、これが違和感の原因になる。自費は金属で約0.5ミリと薄く作れるので、違和感が少ないのです。お見せしましょう」
そう言って村岡氏は自分の口に手を入れ、上顎から入れ歯を取り出した。