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鉄道車両の画一化が進む一方で古い車両が再評価の流れも

 モ3700形は路面電車の車両で、エバーグリーン賞を受賞した頃はレトロ電車としてイベント時に運行されていた。車内には豊橋在住の画家で、とよはし市電を愛する会の伊奈彦定さんが描いた絵が飾られていた。そうしたことから、モ3700形は広く市民には愛された車両だった。しかし、2008年に現役を引退。その後は豊橋市内のこども未来館に保存展示された。

 レトロ電車のモ3700形と入れ替わるように、豊橋鉄道はT1000形という低床車の最新型車両を1台導入。

 豊橋鉄道は初開業した1924年から2008年までの83年間、路面電車に新車を導入したことがなかった。それまで豊橋鉄道で使っていたのは、旧名古屋市電や都電といった他事業者から譲渡された車両ばかりだった。

 2008年に初めて新車を導入できた理由は、国・愛知県・豊橋市から路面電車事業に補助金を受けることになったからだ。

 T1000形が導入されてから10年が経過。新たな車両は、導入されていない。

 モ3700形が担ってきたレトロ電車の役割は、モ3200形に引き継がれた。モ3200形も製造から40年が経過した古い車両だ。いつ引退してもおかしくない。

「豊橋電鉄では夏の4か月間に車内でビールが飲める“ビール電車”を、冬の4か月間に車内でおでんを楽しめる“おでんしゃ”を運行しています。モ3200形は、そのイベント電車として使用しています。モ3200形の車内に伊奈さんの絵は展示していませんが、車体に伊奈さんの絵が描かれており、モ3700形同様に多くの市民に親しまれています」(豊橋鉄道総務部広報担当)

「古い車両を大事に使っている」と言えば聞こえはいいが、地方鉄道の現実を見ると「財政的に苦しいから、仕方なく古い車両を使い続けている」という面があることは否定できない。

 しかし、必ずしも”古い”がネガティブな要素にはならない風潮も出てきている。

 2015年、東京都交通局は都電荒川線に新型車両8900形を導入した一方で、翌年に7000形の車両をミニ改造しつつクラシックな色調にリニューアルした7700形を登場させた。7700形は以前の車体を流用。クラシックモダンを意識した、明らかに昭和テイストを感じさせる外観をしている。

 また、長野電鉄は小田急ロマンスカーとして運行されていた10000形HiSEをリニューアル改造して特急車両の1000系ゆけむりとして運行。また、JR東日本で成田エクスプレスとして運行し活躍していた253系も同じように改造を施し、新たに2100系スノーモンキーとして運行している。

 こうした古い車両が通勤・通学輸送にも活躍し、なおかつ集客の目玉として沿線外からも利用者を呼び寄せる。

 鉄道友の会のエバーグリーン賞がなくなってから15年。時代は巡り巡って、昔の車両が再評価される時代が訪れている。

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