ビジネス

鉄道車両の画一化が進む一方で古い車両が再評価の流れも

豊橋鉄道の赤岩口車庫で眠るモ3700形は1963年に名古屋市電から移籍


 昔の列車を運行することで観光客を増やした事例は多々あるが、特筆すべき事例が山口県の新山口駅と島根県の益田駅を結ぶ山口線だ。

 山口線では、1979年からSLやまぐち号の運転を開始。当時、SLは地方のローカル線から続々と引退していた。そのため、SLを懐かしむファンやSLに乗ろうとするファンが山口線にまで訪れるようになる。SL運行によって観光需要が生まれ、地域活性化にも寄与した。山口線の成功を受けて、ほかの路線でもSLやレトロな列車を運行するようになった。

 日本最大の鉄道愛好者団体・鉄道友の会は、毎年優れた鉄道車両を顕彰するためにブルーリボン賞を贈呈している。しかし、「新しい車両ばかりに賞を出すのではなく、古くても大切に使っている車両にも価値がある。だから、同じように顕彰しよう」という発案から、1984年にエバーグリーン賞が制定された。

 エバーグリーン賞は毎年のように車両が選定されるわけではないが、レトロ電車として活躍した豊橋鉄道のモ3700形や一畑電気鉄道のデハ50形などが受賞。

 しかし、2000年の津軽鉄道のストーブ列車がエバーグリーン賞の最後の受賞車両になった。鉄道友の会事務局長の鹿山晃さんはエバーグリーン賞が廃止された背景について、こう説明する。

「鉄道ファンでなくても古い車両を見ると懐かしく感じて、『乗ってみたいなぁ』とか『写真を撮ってみたいなぁ』という気持ちを抱きます。そうした気持ちは理解できますが、それはあくまでも利用者の目線です。鉄道会社側の立場になると、話は変わってきます。鉄道会社は、できるだけ新しい車両を入れたいという気持ちが強いのです。しかし、採算を考えると新車両は高くて手が出せない。だから、古い車両を使い続けるしかないのです。エバーグリーン賞の受賞は嬉しい反面、新車両を導入できないという悔しい気持ちもあります」

 そうした鉄道事業者の気持ちを斟酌した結果、2003年にエバーグリーン賞は廃止された。

 財政的に新車両を投入できないという事情は、1994年にモ3700形でエバーグリーン賞を受賞した豊橋鉄道を見ると鮮明になる。

 豊橋鉄道は、愛知県豊橋市と田原市で通常の鉄道を運行。また、豊橋市内で路面電車を運行している。

関連記事

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン