芸能

貴乃花親方を追い込んだ「過信効果」と「内集団バイアス」

相撲協会との溝は埋まらなかった(撮影/関谷知幸)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人やトピックスをピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、突如引退を発表し、波紋を広げている元貴乃花親方を分析。

 * * *
 貴乃花部屋が消滅した。それも、あまりにあっけなくだ。受入れ先となった千賀ノ浦部屋へと引越しをした力士たちの表情は、重苦しく暗かった。それもそうだろう。誰も自分の所属する部屋が、消滅してしまうなどと思ってもいなかったはずだ。

 先月25日に行われた貴乃花親方の引退会見には驚いた。もう相撲協会を退職したから元貴乃花親方だが、関係が落ち着いたかに見えていた相撲協会と一体何があったのか。彼らの無意識を分析してみる。

 元横綱・日馬富士による暴行事件に端を発した一連の騒動で協会と対立した元貴乃花親方は、内閣府に告発状を提出したものの、弟子の貴公俊の暴力問題でそれを取り下げた。その後はヒラの理事に降格となり貴乃花一門も解消、無所属となっていた。相撲協会はというと、7月の理事会で貴乃花親方の無所属を認めず、5つある一門のどれかに入ることを義務付けたという。

 ところが会見で、元親方は「告発状の内容が『事実無根』であったと認めなければ、親方を廃業せざるを得ないという有形無形の要請を受け続けてきた」と、眉間や額に深いシワを寄せ厳しい表情を見せた。真実を曲げなければ一門に入ることすら叶わないということらしい。ぶつけられる質問に重い口調で答えていたが、浮き彫りになったのはこれまで以上に頑なな元親方の姿だ。

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