ところが周知のように2015年、フォルクスワーゲン社による、ディーゼルエンジンの排出不正問題が発覚して以降、環境規制の厳格化も相まって、ディーゼル大国だった欧州でのディーゼル車のプレゼンスが急激に縮小。呼応するように、日本のメーカーの中にも潮が引くかのごとく、ディーゼルを止めると宣言する会社が出てきた。
そこで、クリーンディーゼルを擁して環境性能、動力性能双方からディーゼルエンジンのレベルを高めてきたマツダはどうするのか──という点に注目が集まっている。その点に回答したのが藤原氏の弁だが、補足説明した丸本明社長のコメントは、さらに興味深いものだった。
「確かに欧州市場でディーゼル車の販売は減っています。ただ、一方でSUVなどの大きなクルマに、ディーゼルとマイルドハイブリッド(※注)の併せ技の動きが出てきており、これは注視していきたい」
※注/加速時にガソリンやディーゼルなど内燃機関のエンジンをモーターが補助するシステム。モーターのみで自走が可能なフルハイブリッドとはシステムが異なる。
マツダは、たとえばスバルにおけるアメリカ、スズキにおけるインド、三菱自動車におけるASEANなど、特定の国や地域に抜きん出て強みを持つところがない。逆に言えば、極端に弱いところがなくまんべんなく平均値を稼いでいる印象だが、昔からドイツでは、車体剛性の高さなども相まってマツダ車の評価は高く、ドイツの自動車メーカーの動向は、他国のメーカー以上に意識しているように映る。
だからこそ、丸本氏も「マイルドハイブリッドの潮流を注視している」と発言したのではないか。ちなみに、次期「アテンザ」で噂される直列6気筒エンジンとFR(フロントエンジン・リアドライブ)レイアウトも、BMWやメルセデスベンツなど、ドイツメーカーへの意識が窺える。
同じ欧州でも、全車EV(電気自動車)化を宣言したスウェーデンのボルボ社をはじめ、イギリスやフランス等の国はEV強化の立場を鮮明にしているが、ドイツメーカー勢は、EUでの2021年からの環境規制クリアには、マイルドハイブリッドとディーゼルの組み合わせで乗り切れるとする機運があるほか、電動化技術と組み合わせることで、ディーゼル自体の復権も狙っているのではといった指摘もある。
例えば、トヨタ自動車が主導するストロングハイブリッドに比べ、モーターはあくまで補助的、アシスト的なマイルドハイブリッド搭載車は燃費面では落ちるものの、その分コストは安く済む。「EV社会到来はまだまだ先の話で、いまの現実的な解はマイルドハイブリッド」とか「アゲインストのディーゼルにはマイルドハイブリッドの組み合わせが有効」といった指摘があるのも事実だ。