これは習氏ばかりではない。2011年の春節(旧正月)に当時の胡錦濤国家主席が北京市内の低所得者向けの住宅を視察し、ある入居者に「家賃は大丈夫か?」と質問。入居者の女性は「家賃は毎月たったの77元(約1300円)なので、まったく問題ない」と答えた。しかし、後にこのアパートの家賃は2000元(約3万2000円)で、女性は公務員であることが分かったという。
また、2005 年の春節に温家宝首相が河南省の通称「エイズ村」を視察した際に、村は実際は無医村なのに、別の地区から大量の医師と看護師を動員。CCTVのニュースは、現地の医療が充実しているようにアピールしていたのだという。
さらに、1998年5月、当時の朱鎔基首相が安徽省・南陵県糧倉を視察した時、地元幹部が他県から1000トン以上のコメを調達し、200人が4日間かけて、倉庫を満杯にしたが、朱氏が現地を離れてすぐに、コメも倉庫から運び出されたという。
これらの実例について、ある幹部は香港メディアに対して「出世のためなら何でもやるよ」とうそぶいたという。つまり、中国の地方幹部にとって、最高幹部の視察は「出世の願ってもないチャンス」になるということだろう。