ビジネス

スズキ 不正でカーオブザイヤー辞退も「快走」続ける理由

7月に発売した新型「ジムニー」の販売は絶好調(鈴木俊宏社長)

 8月と9月に相次いで自動車(出荷前)の排ガスや燃費の測定データ改ざんが発覚したスズキ。消費者の不信感は高まっているものの、7月に発売された4代目の「ジムニー」は、わずか1か月で年間の販売目標台数(1万5000台)を大きく超える受注を獲得。一時、納車まで1年待ちの状況となるなど嬉しい悲鳴もあげている。果たして、スズキは軽メーカートップの威信を保つことができるのか──。佃モビリティ総研代表の佃義夫氏がレポートする。

 * * *
 2018年度上期(4~9月)の国内新車販売でスズキが快走している。スズキは、軽自動車販売で28万4174台、前年同期比6.8%増と軽自動車市場で3年ぶりのトップを奪還。また、登録車(小型車以上)販売で6万8306台、同14.0%増の伸びを示し登録車市場でマツダを抜いて5位に浮上した。

 これにより、本年度上期国内新車総市場では、トヨタ、ホンダに続く3位だがホンダに肉薄するものとなり、スズキの快走ぶりが際立つ。

 スズキといえば、国内での軽自動車のリーダー格の一方で、世界自動車市場において中国とともに市場拡大で注目されるインドで圧倒的な販売シェアを持つ自動車ブランドで知られる。このところ、商品開発でも意欲的な展開を示し、軽自動車プラスA・B・Cセグメントの小型車のバリエーションを広げている。

 そのスズキだが、昨年秋以降に表面化した自動車各メーカーの工場生産の完成車検査問題で排ガス・燃費の測定データを改ざんしていたことが発覚し、8月末に鈴木俊宏社長が会見し、「極めて重く受けとめている。品質に問題はないが、お客様に不安を与えた。再発防止を徹底する」と謝罪した。

 これを受けてスズキは、今年のカーオブザイヤー選考を早々と辞退して自粛の姿勢を示した。スズキは、今年もその選考対象車として「スペーシア」、「クロスビー」、「ジムニー」の新型車を発売しており、とくに20年ぶりのフルモデルチェンジとなったジムニーは、コンパクト・クロスカントリー4WDとして評価が高く、売れ行きも好調なことから“本命”の有力候補だった。

 スズキとしても7月の発表・発売では、世界でもライバルなき本格的コンパクト・クロカン4WDは“スズキの顔”として世界戦略車に位置づけ自信を持って投入した。発売当初から一時は「納車1年待ち」とされたほどの人気を集めた。この新型ジムニーだけでなく、スペーシアとクロスビーの新型車も軽自動車と小型車の各分野でスズキ車好調販売を押し上げている。

 それでも、スズキはカーオブザイヤー選考を自ら辞退して、完成車検査問題での社会的責任と企業姿勢を示した。名物経営者である鈴木修会長の「鶴の一声」による決断ともされるが、日産以下他の自動車メーカーもこの完成車検査問題で芋づる式に「不正あるいは不適切な行為」が発覚した中で、ある意味スズキの潔さが際立つことになった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

解散を発表したTOKIO(HPより)
《TOKIO解散には迷いなし?》松岡昌宏、「男気会見」で隠せなかった本音 唯一違った“足の動き”を見せた質問とは?
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
ディップがプロバスケットボールチーム・さいたまブロンコスのオーナーに就任
気鋭の企業がプロスポーツ「下部」リーグに続々参入のワケ ディップがB3さいたまブロンコスの新オーナーなった理由を冨田英揮社長は「このチームを育てていきたい」と語る
NEWSポストセブン
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《渡部建の多目的トイレ不倫から5年》佐々木希が乗り越えた“サレ妻と不倫夫の夫婦ゲンカ”、第2子出産を迎えた「妻としての覚悟」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
事件の“断末魔”、殴打された痕跡、部屋中に血痕…“自慢の恋人”東川千愛礼さん(19)を襲った安藤陸人容疑者の「強烈な殺意」【豊田市19歳刺殺事件】
NEWSポストセブン
都内の日本料理店から出てきた2人
《交際6年で初2ショット》サッカー日本代表・南野拓実、柳ゆり菜と“もはや夫婦”なカップルコーデ「結婚ブーム」で機運高まる
NEWSポストセブン