若い頃は苛烈な役柄が多かったが、九〇年代以降は知性や教養のある大人の役が多い。
「俳優って自分が演じてみたいと思っていた役とは違う役が来ることが多いんですよね。アクションをやりたかったのに恋愛ものばかりやったりとか。
でも、自分が意識していない部分を人に見つけてもらう、というのが面白い仕事なんだなあと思います。例えば『ピュアラブ』というお昼のドラマで医者の役をやっていたら、それを見た野島伸司さんが全く違うコミカルな役で声をかけてくれる。一つの役が、見る人によって全く違う役に繋がるんですよ。
ですから、人に決めてもらうことって自分にとっても発見なんですよね。自分だけだと役柄は膨らみません。俳優は人から生かされているんだと思います」
■かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
■撮影/渡辺利博
※週刊ポスト2018年11月2日号