あなたに同調する人もいるはずです。しかし、例えば若者の打ち所が悪く大ケガをしたら、どうでしょうか。単なる自業自得だとはいえないのが、一般の感覚だと思います。たいしたことが起きないぶつかり方であれば、若者も自分の非に気づき、あなたに突っかかりはしないでしょう。事実上問題は起きないかもしれません。
しかしながら、大きな被害が生じた場合、法の判断を受けることになります。ぶつかった点は2人とも同じですが、若者には過失が、あなたには故意があったことになります。避けることもできましたし、避けなくても、声を出して注意することはできます。イヤホンを付けていても、大声を上げれば聞こえるもの。以上を踏まえ、回避する方法があったので、正当防衛にもならないのです。
歩きスマホを不快に感じるのは私も同じです。それでも避けるのが嫌でぶつかるというのは、もっと賛成できません。とはいえ、仮に騒音がひどく、人混みで避けようがない状況では別です。ぶつかるという結果を回避できませんし、注意義務違反はなく、不法行為にはなりません。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2018年11月9日号