溝口:そこまでは分からなかったけど、山口組の中のアンチ渡辺だったり、食肉業界のアンチ浅田だったり、2人の関係をよく思わない人間が出てきて、情報が集まってきた。
浅田は5人兄弟の次男ですが、長男と末弟をグループの経営者に据える一方、三男と四男が山口組系の暴力団に入った。三男が山一抗争(*2)で一和会に移ってしまったとき、浅田は渡辺組長と一緒に三男を説得し、足抜けさせます。そこから「ナベちゃん」と呼ぶほどの深い関係を築いていく。渡辺組長夫人とハンナン系グループ企業の間で不動産売買があったり、夫人がハンナン系企業の取締役に就いたり、渡辺組長の家族名義で浅田が1億7000万円もの定期預金を積み立てたり、文字通り家族ぐるみだったんです。
【*2:1984年、竹中正久組長が4代目を襲名したことに反対した反竹中派が「一和会」を結成。竹中組長は一和会に殺害され、山口組は報復に動いた。1989年の一和会解散まで双方で25人の死者を出した】
鈴木:それが力の源泉になったと。
溝口:業者同士でぶつかったときなんかに、ケツ持ちの暴力団が強いほうが押し切れる。そうした意味で、“山口組五代目”という強力な名刺カードを浅田は手にしていたんですね。
鈴木 サカナとヤクザとの関係は、全国各地に薄く広く分布してるんだけど、当時、食肉とヤクザの関係は浅田元会長という存在が突出していましたよね。
溝口:今でも両者の関係はゼロではないと思うけど、ヤクザの力が弱くなって、ひけらかすメリットがなくなったと言えます。
※週刊ポスト2018年11月9日号