ここで個人を偲ぶ(写真/目黒御廟)
遺骨を移動させる自動搬送式に対して、「軽々しい」と否定的な人々も確かにいた。そうした中で、“外墓との間を取った形”と人気を集めるのが、「仏壇型」「ロッカー型」の納骨堂だ。
両タイプを有する「立正寺」(渋谷区代々木)を訪ねた。
3階建ての納骨堂に入ると、幅広い通路の両側に仏壇型が60基、ロッカー型が160基並ぶ。どちらも黒の本塗りが施され、同じ高さだが、ロッカー型は天地に5基重なっている。
率直に言うと、私は最初、「仏壇は家に置くものでしょう」という思いがあった。しかし、同行したカメラマンの「何百人もの方がこの中に眠っていると思うと身が引き締まるね」という一言でハッとした。自動搬送式では、目の前にして祈るのは先祖の遺骨のみだが、ここでは室内全域に故人の気配を感じ、凛として張りつめた空気があった。供花や線香も実物で、意外と従来のお墓参りに近い感覚だ。
価格は、仏壇型が使用期間33年で180万円、ロッカー型は13年と33年があり、最も安いものは60万円だ。
使用期間の限定はやや気になったが、更新することも可能で、使用期間が終われば永代供養墓に合祀される。「子供の代までお参りに来てくれればいい」という理由で期間限定の形態を選ぶ利用者もいるという。
なかには驚くべき価格の仏壇型納骨堂もあった。東京・青山にある実相寺「青山霊廟」の「特別壇」は、何と600万円。
幅62センチ、高さ2メートル弱の特別壇は、木製部分に天然漆より高品質のカシュー塗りが施され、手彫りの薬師如来まで安置されている。仏壇のひとつひとつが、小さな寺のようだ。青山霊廟の販売担当者が語る。