ではなぜ、高体温で免疫力アップという説が説得力を持って広まっているのか。
「インフルエンザや細菌感染で発熱するのは、ウイルスや菌を制するために体温を上げて免疫力を高めているからです。疾病に対処するための重要な機能ですが、それが平常時でも有効だという捉え方につながったのでしょう。健康な人が体温を上げて免疫力が向上し、長生きするというエビデンスはありません」(米山医師)
“危機”の時に高いのと“平時”に高いのでは意味が違うという指摘だ。おおたけ消化器内科クリニック院長の大竹真一郎医師は、こう話す。
「そもそも免疫力というのは数値化できるものではない。ある健康本に〈体温が1度下がると免疫力30%低下〉と書かれていましたが、この数字には根拠がありません。人間は恒温動物なので、熱い風呂に入ったとしても体温は一時的に上がるだけで、平熱は変わらない。冷え性の場合はメリットがあるかもしれないが、冷え性の人は筋力が落ちていることが多く、外から温めるより運動して筋力アップしたほうが有効です」
それどころか、無理して体温を上げようとすると、かえって健康を害することもある。前出・江田医師が語る。
「低体温だからと不安に駆られて温活しすぎることには注意が必要です。高齢者が良かれと思って熱い湯に長風呂したりすると、脱水症状から脳梗塞をひき起こす危険がある。中高年でも、筋トレを無酸素でやり過ぎると動脈硬化を進めかねない」
“温活”には熱くなりすぎないほうがよさそうだ。
※週刊ポスト2018年11月16日号