スポーツ

今年は48人参加も… 興行化するプロ野球トライアウトの悲哀

参加選手の中で最高齢だった34歳の西岡剛

 NPB(日本プロ野球機構)の球団を戦力外となった選手たちが、球界への生き残りをかけて挑む12球団合同トライアウトが11月13日に行われた。球界の秋の風物詩には、“異変”が見て取れた──。ノンフィクションライター・柳川悠二氏がレポートする。(文中敬称略)

 * * *
 開場前のタマホームスタジアム筑後(以下、タマスタ。福岡県筑後市)には、徹夜組を先頭にした長蛇の列ができあがっていた。8時半にゲートが開くと、有料席となるバックネット裏からいっぱいとなり、続いて無料席となる両サイドの内野席が埋まった。

 今年のトライアウトに参加したのは投手29人、野手19人の計48人。

 熱心な各球団の野球ファンにとっても、そして行き場を失った選手の悲哀を描くメディアにとっても晩秋の一大イベントとなっているが、今年はどうも様子が違った。

 選手の出入り口をファンが占拠し、選手が到着すれば叫声をあげ、激励の言葉と共にプレゼントを手渡す若い女性ファンの姿も目立った。

 さらに報道陣も、実に170人(そのうち半数がテレビ局スタッフ)。トライアウトの様子は生中継され、無数のカメラが選手を、その家族を、追った。さらに、NPB以外の国内独立リーグや、社会人野球のチームを持つ企業、メジャーを含む海外の球団まで40チーム以上の関係者がバックネット裏に陣取っていた(ベースボール・チャレンジ・リーグ「富山GRNサンダーバーズ」の監督に就任したばかりの二岡智宏らの姿もあった)。

 とにかくトライアウトに集まる人間の熱量が、例年以上なのだ。

 12球団が持ち回りで開催しているトライアウトは今年、福岡ソフトバンクの担当だった。2年前に完成したタマスタは3113人しか収容できず、福岡ソフトバンクは混乱を避けるために、1500席を初めて有料(一般800円、各球団のファンクラブの会員証を提示すれば300円)にし、残りを例年通り、無料開放した。その理由を広報担当者が話す。

「過去のトライアウトでは、1万人を超えた例もあるとお聞きしました。ご覧のとおり、ここは3000人ちょっとのキャパシティしかありません。トライアウトは、12球団の選手が参加し、応援するファンの方々も遠方からもいらっしゃいます。そういう方々に安心して応援していただくために、先行販売を実施したのです。決して営利目的ではございません。お客様の数は、4000から4500を想定していましたが……」

 球場に入れないファンも続出。有料席と無料席の間の通路には、警備員を立てて混乱を回避していたが、無料入場者が有料席に座るようなシーンもあった。

 しかしトライアウトを二部制にして、昼の休憩時には空いた席に入場を待っていたファンに開放したこともあり、大きなトラブルとはならず、入場者数はのべ5536人。野球のイベントとしては同球場の最多記録となった。

関連記事

トピックス

エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
昨秋からはオーストラリアを拠点に練習を重ねてきた池江璃花子(時事通信フォト)
【パリ五輪でのメダル獲得に向けて】池江璃花子、オーストラリア生活を支える相方は元“長友佑都の専属シェフ”
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
NEWSポストセブン