元外務省主任分析官の佐藤優氏と、『ゴルゴ13』の作者さいとう・たかを氏が、「ゴルゴ(通称G)のインテリジェンス」を読み解く短期集中連載。第2回は、作品が長続きする秘密と、独裁的なリーダー2人の“本質”に迫る。
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佐藤:『ゴルゴ13』のスタートは(ビッグコミック)1969年新年号(1968年11月発行号)からなので、連載50年。改めてそのお仕事ぶりに感服いたします。
さいとう:われながらよく続いていると思いますよ(笑)。実は東西冷戦が終わった頃、散々、「これでゴルゴの仕事場がなくなりましたね」と言われたんです。私は、「何を言ってるんだ!」と反論しましたけどね。冷戦でがんじがらめになって、各国、身動きがとれなかった側面があるのに、その縛りがなくなってしまったことで、世界中、鍋が煮えた状態になってくるぞ、と。エネルギー問題、宗教問題……こういうものがドッと吹き出してくる。特に中東が危険だぞ、と私は言っていたけど、本当にそうなってしまった。世界の混乱が深まって、むしろ、ゴルゴの活躍の場が増えてしまったんです。
佐藤:慧眼ですね。たしかに世の中がいくら変わろうとも、 “人間の本質”は変わりません。
さいとう:まさにそういうことです。
佐藤:恨みもある。権力闘争もある。騙し合いもある。新自由主義経済の時代になって、各国の欲望がむき出しになった側面もあります。となれば争いごとは絶えない。ゴルゴの出番、というわけですね?
さいとう:そうです。皆さん、私がこういう劇画を描いているので、私が世界情勢に精通しているように思っているんですが、そういうことじゃないんです。私が描いているのは、「世界情勢」ではなく、「人間のドラマ」です。実際、世界の情勢というのは、隣近所の出来事となんら変わりがないと思っている。隣家との境界線のいざこざなんて、そこら中にあるでしょ? あれと国境線をめぐる争いは、根本的に違いがない。ただ、隣近所の出来事を描いても、作品としては面白くない。だから舞台を「世界」にしたというだけです。
佐藤:最近は、トランプ大統領のように、まるで漫画のようなリーダーも出てきています。彼なんか非常に人間くさいですね。