さいとう:たしかに描きやすい人物ではあるね。トランプ大統領は、欲望が丸出しだから。政治をやってるんじゃない。あれは商売をやっている。
佐藤:外務省は困っていると思いますよ(笑)。分析しづらいリーダーだから。必死にいま、すり寄ろうとしているところでしょうね。もともと外務省というところは、昇る太陽はひたすら拝むけれど、沈みゆく太陽は見向きもしないという組織なんです。長いものには自分から巻かれたいという(笑)。
◆いちばん怖い政治家はプーチン大統領
さいとう:作品的に、トランプの登場は助かるね。前任者のオバマはどうも描きづらかった。
佐藤:わかります。私から見てもヌルッとしていてどこか捉えどころがありません。ところで、ロシアのプーチン大統領は描きやすいですか?
さいとう:それ以前の話として、私は怖いね。いま世界を見渡してみて、あれほどかつてのような独裁者はいませんよ。昔を見ているような気持ちになる。いまの独裁者というのは自分のことばかり考えているから、最終的に国民からそっぽを向かれるでしょう。でもプーチンは違う。彼は自分の国のことを考えている。しかも自国の利益と個人の利益とが重なっている。
佐藤:おっしゃる通り、プーチンとロシアは、同心円を描いています。彼は「ソ連」は好きだけど、「共産主義」は嫌い、という政治家で、非共産主義的なソ連をつくろうとしています。自信を失いかけていたロシア国民に、再び誇りを持たせることに成功し、いまの人気を得た。
さいとう:それがとてつもなく怖い。あんな怖い男、ヒトラー以後、初めて登場したと思う。プーチンには“狂気”を感じる。