佐藤:その見立ては間違っていません。実際、プーチンはマフィアの親分でもあるんです。彼は個人的に使える「暴力装置」を持っていますから。ロシアには、スポーツ観光国家委員会という表の組織があるのですが、実はこれがほとんどマフィアの組織。旧ソ連時代、見込みのある子には幼少の頃からスポーツの英才教育を施します。特に格闘技系の才能のある子には、筋力増強剤をガンガン打ち続けるような乱暴なことをしていました。当然、最終的に使い物にならなくなる人間がたくさん出てきます。
旧ソ連時代はそれでも、各地にスポーツ施設があったので、そういう人材を雇うことができた。ところがソ連が解体し、それもままならなくなったことで、彼らがマフィアの用心棒になってしまった。それでエリツィン時代に、彼らを野放しにしておいてはまずい、とスポーツ観光国家委員会を作ってそこに押し込んだんです。あえて予算をつけず、魚と石油の輸出権を与えて自分たちで稼がせた。いわば政府公認のマフィア。
プーチンはそのスポーツ観光国家委員会をがっちり握っていて、面倒なことが起きると警察を通さないでスポーツ観光国家委員会に処理させるんです。
さいとう:そういう背景が表情ににじみ出ているから、「怖い」と感じてしまうのかもね。
佐藤:でも私からすると、プーチンよりも安倍晋三首相のほうが怖いですけどね。何を考えているのかよくわからないところがありますから(笑)。
※佐藤優、さいとう・たかを・著/『ゴルゴ13×佐藤優 Gのインテリジェンス』より