グラビア写真界の第一人者、渡辺達生氏(69)が“人生最期の写真を笑顔で撮ろう”とのコンセプトで立ち上げた『寿影』プロジェクト。渡辺氏は、自然な笑顔を引き出すべく、撮影する人に「一品」を持ってきてもらって、それにまつわるエピソードを聞きながら撮影する。
評論家の佐高信氏(73)が持ってきたのは、書家であった父・佐高茜舟の書。
「海に出て木枯帰るところなし」
色紙の書は30代後半、フリーの評論家となった頃に父から教えられた山口誓子の句。特攻隊の片道飛行を念頭に詠まれたその句は、当時の覚悟と重なり、今も佐高氏の心に残る──。
「親父は教師でありながら、茜舟(せんしゅう)の雅号を持つ書家でした。日展にも5回入選し、93歳で亡くなるまで書を愛し、全うした人。“無能無才にして此の一筋につながる”という芭蕉の言葉通りの親父でしたが、ひとつの道を貫く姿勢はどこか私も受け継いでいるように思います」
辛辣な評論で怖いイメージだが、素顔は意外にも柔和で笑いが絶えない。また、韓流ドラマにハマる一面にも親しみが湧く。