「音楽を聴いて心が動くと、自分では意識されなくても脳や体にはさまざまな生理学的な変化が起きます。たとえば快・不快、喜びや悲しみなどいろいろな感情が湧き、リラックスしたりイライラしたりします。またストレスや消化にかかわるホルモンにも影響を及ぼします」
ストレスホルモンに関しては、貫さんが東京大学心療内科医と共同研究を行い、ヒーリングミュージックでストレスホルモンが軽減されたことを検証。1999年の世界音楽療法大会で発表されている。
「さらには免疫系にも。認知症の高齢者に音楽療法を施したところ、免疫力の指標になるNK細胞が増えたという検証結果もあります。このように音楽の効果は、数々の研究や検証実験から科学的に検証されています」
音楽療法は、こういった音楽の力を活用した療法だ。
「私たちの体には、多少ストレスがかかっても、健康状態に戻ろうとする性質、生命恒常性(ホメオスタシス)と呼ばれるものがあります。音楽には大きく分けると活性化させるものと鎮静化させるものがあり、元気のないときには活性的音楽、興奮していら立つときには鎮静的音楽を使って、ホメオスタシスを良好に保てるようにするのが音楽療法の主な目的です。高齢者施設などで行われる音楽療法は、一見、レクリエーションのように見えるかもしれませんが、一つひとつが研究・検証に基づいた、目的を持ったセラピーなのです」
※女性セブン2019年1月1日号