大人の「発達障害」に対する関心が高まっている。NHKで特集が組まれるなど、ここ数年で、関連の情報も増えている。ライターの姫野桂氏も、世に発達障害とは何かを知らしめてきた一人だ。2018年8月に刊行された『私たちは生きづらさを抱えている』(イースト・プレス)で、発達障害の当事者22人のリアルな声を伝えた。そして12月に刊行された新刊『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)では、発達障害という「診断」は下されていないものの、「傾向」のある人々の悩みや対策を聞いている。自らも発達障害であることをカミングアウトしている姫野さんに、“生きづらさ”を抱えながら生きるすべを聞いた。(インタビュー【後編】をお届けします)
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◆私はこんなに出来の悪い子だったのか
──姫野さんは前著『私たちは生きづらさを抱えている』で、心療内科を受診し、発達障害の診断を受けることになった経緯から、テスト内容、診断結果までを、克明にレポートされています。発達障害であることを明らかにするのに、抵抗はありませんでしたか。
姫野:私自身はこれまでも、自分自身を見せていくスタイルで仕事をしてきましたから、自分にとっては自然な流れでした。ただ、発達障害であるという診断を受けたときはショックでした。
発達障害には大きく3種類【※】あるのですが、私の場合はLDが最も強く、2桁以上の繰り上がり・繰り下がりのある暗算ができません。また、ADHDとASDの傾向も指摘されていて不注意傾向が強く、急な仕事が入るなどイレギュラーな場面に直面すると、緊張感に襲われます。
【※発達障害には大きく3種類ある。ADHD:不注意が多かったり、多動・衝動性が強い。
ASD:コミュニケーション方法が独特だったり、特定分野へのこだわりが強い。LD:知的発達に遅れがないにもかかわらず、読み書きや計算が困難】
──診断が下された瞬間をふり返って、どのような気持ちになりましたか?
姫野:自分はこんなに出来が悪い子だったのか、これまでよく生きて来られたなと(笑)。当時、私はワーカーホリック気味で、仕事をめちゃくちゃしていた時期だったのです。それで体調を崩して心療内科を受診したのがきっかけだったのですが、これまで、苦手なことを無理やりやっていたんだな、という気持ちにもなりました。