──ただ、診断を受けたときの反応は、人によって違うんですね。
姫野:ショックを受けたという方もいれば、うまくいかない理由がわかって、すっきりした、という方もいます。そこはもう、人それぞれですね。私の場合はショックだったのですが、以来、自己認識が変わりました。
──どのように変わりましたか?
姫野:できないことは認めて、人に頼むようになりました。以前は確定申告を自分でやっていたのですが、計算が苦手なため、80万円も間違えるという失敗をしました。今は税理士さんにやってもらっています。他にも色々とミスが多いのですが、障害だから仕方ないと、割り切れるようになりましたね。努力が足りないのではなく、苦手なだけだと。その認識がないと、自分を責めるか、人を責めるとか、別のどこかに原因を求めてします。今は診断を受けてよかったと思っています。
──では、発達障害かもしれないと感じる人は、診断を受けたほうがいいでしょうか?
姫野:診断にはお金がかかりますし、心療内科に行くこと自体、ハードルが高いと感じる人もいると思います。そういう方は、今は自己診断できるチェックリストが載った本が出ているので、まずはそうした本を活用するのもいいと思います。自分はこういう傾向があるんだな、とわかるだけでも、変わるかもしれません。
◆「普通」になりたいと思ってきたが……
──新刊の『発達障害グレーゾーン』のインタビューの中で、「普通」のことができない、という言葉が出てきます。当事者やグレーゾーンの方の「自分は普通ではない」という自覚によって、そもそも「普通」とは何かを考えさせられます。
姫野:「普通」というキーワードは私の中でもずっと引っかかっていました。私自身も、普通になりたいと思って生きてきたからです。私が思い描く普通とは、大学を出て、企業に勤めて、3、4年経って結婚して家庭を持って、子供を2人くらい産んで……というもの。実際に、そういう人生を歩んでいる友人もいますが、私にはムリでした。
1年前くらいからようやく、「普通」にならなくていいや、と思えるようになったんです。