2012年5月に発表した『君にとって死は悪いことか(Is Death Bad for You?)』と題した論文(学術誌『クロニクル・レビュー』掲載)では、「人はなぜ死を〈悪いこと〉と思うのか」を2つのストーリーで問う。
〈1、君の親友が100年間の宇宙探査に出発したが、発射間もなくして宇宙船は地球との通信を絶った〉
〈2、君の親友が100年間の宇宙探査に出発したが、発射間もなくして爆発し、親友は死亡した〉
ケーガン教授はこう説明する。
「どちらも〈友との永遠の別れ〉であることに変わりはない。だが、2番目のほうが君にとっては〈悪いこと〉であり、落胆するだろう。しかし、君は親友の死が〈親友にとって悪いこと〉だから落胆するのではないはずだ。ならば、死が〈死んだ人にとって悪いこと〉だと、なぜ断言できるのだろう。
死に至るプロセスが悪いかどうかを問うているのではない。〈悪いこと〉とは、死に至るプロセスで起こり得る苦痛に満ちた体験であって、死そのものではない。そんな体験をせずに、眠るがごとく安らかに死んでいくことだってあり得る」
さらに、死を「人間の非存在の状態」と位置づけてこう論じる。
「もし非存在が〈悪いこと〉であれば、我々は生まれる前の永遠の非存在期間にも落胆すべきではないか。馬鹿馬鹿しい。誰がそんなことで落胆するのか。ということは、死後の永遠の非存在にがっかりすることも意味のないことではないか」