◆腫瘍マーカーの意味は?

 本来なら、破裂することなく一生を終えたはずだったかもしれない。見つかりさえしなければ、最悪の事態を招くことはなかった。まさに、「過剰医療」が招いた悲劇だ。

 血液検査の1つ、「腫瘍マーカー検査」は、腫瘍ができたときに血液中に分泌される特徴的な物質を測定、画像診断と組み合わせて大腸やすい臓、肺、胃、肝臓、子宮、卵巣などのがん発見に用いられる。

 だが、これも無意味だという。

「腫瘍マーカーほどあてにならない検査はない。手術できる大きさのがんには2割程度しか異常値を示さず、逆に、正常でも5%ほどの人は異常値が出てしまうという特性があり、不安ばかりをあおるのです」(中山さん)

 プロである医師はその程度の精度だと知っているが、そんな検査でも、「がん陽性」の結果が出れば当然、一般の人は不安になる。

「私が病院で診療をしていた当時、毎日、何人かは『腫瘍マーカーが陽性で』という人が来院してきました。風邪をひいただけで数値が上昇するうえ、がんがあっても見落とす可能性があり、不安に陥れられるだけ。受ける意味はありません」(中山さん)

 では、いったいどの検査を選べばいいのだろう。

 2017年、女性のがん死亡部位第1位の大腸がんはどうか。

「大腸がん検診は、いわゆる検便である『便潜血検査』で行われることが多いが、それで見つかるのは、かなり進行してから。おすすめは40代になったら大腸内視鏡検査を受けること。

 一度専門医に診てもらえば、自分の腸にポリープがあるかないかなど、がんリスクが高いのか、そうでないのか判別してもらえる。高リスクなら毎年内視鏡検査をするよう言われますし、そうでなければ『次からは3年に1度でいい』といわれる場合もあります」(村上さん)

 その場合も、便潜血検査は毎年受けたい。また、最近は家庭用の血圧計も普及したが、誤差がある場合も考えられるため、年に1度はプロによる血圧測定も必ず受けてもらいたい。さらに、忘れられがちな項目として、歯科検診がある。

「歯周病によって口内細菌の質が悪くなると、腸内フローラにも影響を与え、糖尿病や肺炎など全身状態を悪くするリスクがあることがわかってきました」(村上さん)

 歯科も年に1回は検診を受けてほしい。歯は失ったときのリスクが大きいことに加え、どうしても後回しになりがちだからこそ、常に気をつけたいものだ。

※女性セブン2019年1月17・24日号

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