一時代を築いた市原悦子さん(時事通信フォト)
だけど、市原さんと練習したお陰で台詞や役柄がけっこう頭に入ってきてね。結局、オイラが市原さんに稽古をつけてもらったことになっちゃった(笑い)。
その時の集中力を見て、「やっぱり一流の役者は違うな」って思ったよ。この時期は『アウトレイジ』シリーズでいろんな名優に出てもらったころなんで、特にそれを感じたね。
しかも市原さんの場合、リハーサルと本番でまた「スイッチ」が変わるんだよな。オイラとのシーンも本番でカメラが回るとまたグッと芝居が良くなってさ。そういうところは、この間亡くなっちまった樹木希林さんと似てるよね。
だけど、2人は女優のタイプとしては対照的だったと思うぜ。
2人とも演技中の「間」の取り方が上手いんだけど、その間の使い方がゼンゼン違う。希林さんは共演者が熱演していたら、わざとそこに台詞をかぶせるようにして間を詰めたり、逆になかなか台詞を言わないことで間を外すこともあった。そういうやり方で、相手に実力の差を見せつけるというかさ。
共演者からするといいところを全部持っていかれちまうから、「怖い役者」だったと思うんだよな。
市原さんはその逆で、相手の間に合わせるというか、「受け」を重視する役者という気がするね。相手の出方をよく見て、相手役の俳優の演技を引き立ててくれるというかさ。
絶妙の間で台詞を入れてくれるから、相手も乗ってこれる。2人とも違った魅力だけど、市原さんと演る方がオイラは楽かもな。