不景気が続くなか、大学にかかる「お金」は各家庭にとって深刻な問題となる。ファイナンシャルプランナーの松山翠里(みどり)さんが指摘する。
「特に親元を離れてひとり暮らしをすると、家賃や食費で月10万円以上かかることもある。これに加え、学費がかかればかなりの負担になります。地元の大学が人気なのは、費用面も大きいはずです」(松山さん・以下同)
実際、途中で家計が苦しくなり、仕送りがなくなり中退する学生も少なくない。一方で、最近は、「返さなくていい奨学金」も増えている。
「給付型奨学金といい、米国など海外では普及しているのですが、ようやく日本でも増えつつあります。基本的には公的な奨学金は親の収入が低く、本人の成績が優秀であることを条件とするケースが多いのですが、大学などが主体の奨学金では、成績さえよければ授業料が全額免除されるものもある。
また、何らかの理由で途中から学費が払えなくなった学生のための『緊急・応急採用奨学金』という制度もある。まずは日本学生支援機構や各大学・民間団体のホームページなどで制度を調べてほしい。奨学金には『狭き門』のイメージがあるかもしれませんが、すそ野は確実に広がっています」
◆働ける大学
経済的援助が必要な学生のために、大学が独自に「職場」を提供するケースもある。東洋大学は、昼間は同大学白山キャンパスの大学事務局などで働き、夜間は大学で学ぶことのできる、「独立自活」支援推薦入試制度を実施する。夜間学部の学費は年間53万5000円と国立大学並みに安い。
さらに同制度は働いて得た給与を学費や生活費にあてられるのはもちろん、学費の半額を返済のいらない給付型奨学金として支給し、希望者には1日2食付きで月額6万円の寮を提供する。
東洋大学理事で入試部長の加藤建二さんは、制度を作ったきっかけは、東日本大震災だったと振り返る。
「震災後に、仙台の高校で親御さんを亡くして大学進学を断念する学生がいることを知りました。さらに被災地以外でも、学力はあるのに経済的な事情で大学に行けない学生が多いことを知った。そこで働く場所、勉強する場所、住む場所を揃えれば、進学をあきらめた学生たちが大学に行く道が開けると思い、昼間は大学で働いて収入を得られ、夜は勉強してもらえるような制度を作りたいと考えたのです」(加藤さん・以下同)
東洋大学の建学の精神は〈余資なく優暇なき者のために教育の機会を提供する〉。