デビューしたものの、初めてのレースでは、力を出し切れないケースもあります。5着以内に入れば、次走未勝利戦への優先出走権がありますが、未勝利馬の頭数が多く、6着以下だと1か月以上出られないことも多い。問題点が見つかれば時間をかけて再調整もしたいところです。
さらに今年からレースに条件が付加されています。3歳以上の未出走馬と未勝利馬が出走した際(新馬戦を除く)、3走連続で9着以下だった場合は2か月間の出走停止。これは「より拮抗した馬による競走」のためで、デビューしたはいいけれども、3回走って一度も8着以内に来られない馬には、かなり厳しい条件です。
そのうえ今年は、昨年まで9月の中山・阪神開催に組まれていた限定未勝利戦(いわゆるスーパー未勝利)が編成されないことになったのです。つまり3歳未勝利馬は、夏競馬までに勝ち上がらないといけないわけです。
陣営としては、「この馬、8月までに勝たせられるかな」ということになる。目処の立たない馬には見切りをつけざるを得ず、2歳馬などと入れ替える。馬の回転がどんどん早くなっていきますね。
しかし、遅生まれの素質馬などがデビューの時期を逸してしまう可能性もある。体質的に弱い馬でも、3歳の夏にころっと変わることはよくありますが、長い目で見た育成が利かなくなるのです。
●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後17年で中央GI勝利数24は歴代3位、現役では2位。2017年には13週連続勝利の日本記録を達成した。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。本シリーズをまとめた『競馬感性の法則』(小学館)が発売中。2021年2月で引退することを発表している。
※週刊ポスト2019年2月15・22日号